手嶋兼輔

ギリシアとローマは「ギリシア・ローマ」と言うように一体化した呼び名が通用しているが、実はその両者はその名称の持つ響きほどには均質の国家、社会でもなければ、文化を共有しているわけでもない。双方は本質的には別個な、それぞれの歴史と伝統を重ねている。それを「ギリシア・ローマ」とひと括りにまとめてしまうところに誤解が生じるように思える。ギリシアにはギリシアの、ローマにはローマのそれぞれの背景がある。ギリシアは地中海の東に発展し、対するローマは地中海の西に地歩を築いた。両者は言わば、後ろ向きに背中合わせに逆方向を向きながら成長してきたような間柄なのである。